2009年07月02日

鋼殻都市レギオス09

☆鋼殻都市レギオス 第九巻 雨木シュウスケ 富士見書房 二〇〇九年六月十九日

(ストーリー)

 狼面衆と対立するディックは、グレンダンの奥に秘められた秘密を探ろうとするが失敗する。一方、レイフォンの幼なじみ、リーリンは、養父から預けられた鋼金剛(ダイト)をレイフォンに渡そうとして、拒否されてしまう。いったい、レイフォンはどういうつもりなのか。

 そんななか、再び都市との戦争になるツェルニ。そのタイミングで汚染獣が現れるわ、狼面衆が現れるわ、ツェルニは今までにない危機を迎える。

(書評)

 全体的に、まとまりを欠いているような気がします。

 あまりにも、詰め込みすぎなんじゃないかなっていう気がするんですねえ。。。

まず、この本で何が言いたいのか、よくわからない。

 水着シーンがあるので、男の子的には満足できる部分もあるでしょうが、わたしはそれ以外はよくわかりませんでした。

 

 主眼がレイフォンの心の変化にあるんだろうな、とは思うんだけど、そのわりにはそれに割かれたページ数があまり多くない。

 戦いがいやでツェルニにやってきたレイフォンが、結局ニーナに影響を受ける形で戦いに進んで赴くようになっていく、しかし一方で、昔の故郷、グレンダンでの事件がレイフォンにこだわりがある。そのこだわりを、リーリンが解きに来るが、いったんレイフォンはその事実を拒否する。

 それで、なぜ、ということが主体になるんですが、そのわりには、冒頭は天剣授受者の受難の話だったりするし、受け取るまでのレイフォンの気持ちについては、ほとんど触れておらず、誰が主役なんだよっという雰囲気がしないでもないんですよねえ……。

 もうちょっと、レイフォンの心の動きとかが知りたいなと思います。

 それと、ツェルニが次々と受難に陥るわけですが、レイフォンと戦いたがっていたサヴァリスが、なぜレイフォンとともに汚染獣と戦うのか、よくわからないんですよね……。

 レイフォンを倒したいんだったら、汚染獣と戦ってるときのレイフォンを倒すのが一番じゃないかと思うのですが。

 やはり、サヴァリスは戦闘狂だから、なのかなあ。

 今回は、印象に残るシーンがなくて、引用もできません。

「これは面白い」「こんなかっこいい台詞がある」といったものがあれば書けるんですが、前に書いたとおり、この話はまとまりがないので、抜き書きしても意味がないんですよね。全体を示すシーンがないんで。

 

 まあ、予測不能な本ではあったのですが、もうちょっとなんとかならないものかと思いました。ちょっとオタクすぎる本でした。

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鋼殻都市レギオス第8巻

☆鋼殻のレギオス 第八巻 雨木シュウスケ 富士見書房

             二〇〇九年五月三十一日

(ストーリー)

 兄に頼ってばかり居る自分がふがいなくてフェリはバイトを始めたが、そのバイトはピンクのフリフリ制服を着せるメイド喫茶のようなところだった……。

 一方、レイフォンの過去を知るリーリンが現れ、メイシェンはこころおだやかではない。天剣授受者という、前にリーリンからの手紙を盗み読みして知った言葉の意味もわからないメイシェンは、それを知っていそうな周辺の人々に情報を当たろうとする。好奇心旺盛なミィフィは、取材を通してその言葉の意味を探ろうとするのだが、関係者各位はみな口が堅いのだった。

(書評)

 この話は、二つセットになってます。

 前半三分の二ぐらいは、フェリ・リーリン・メイシェンの三人の娘たちの話です。

 フェリの話が一番傑作なので、ちょっと引用します。無表情なフェリに、喫茶店のオーナーが説得するシーンです。

(引用開始P33より)

「笑顔…… ですか?」

「そう。お客様に最上のスマイルをお見せして」

「笑顔……」

(中略)

「客を見なくてもいいのよ。歓迎しますがだめなら、わたしの可愛さを見せつけてあげるわでもいいわよ」

 それもまた難問だ。

「うちは別に肩肘張った接客はしなくてもいいから。どっちかと言うとフランクな方がいいくらいよ。明るい感じで友達に接するようにね」

「フランク……」

「だめ?」

 店長も、だんだん不安になってきたようだ。

(中略)

「じゃ、笑う練習してみましょう。あの子たちを参考にして、いらっしゃいませって言ってみて」

「……いらっしゃいませ」

(後略)

こんな調子で、店長とフェリが、笑う練習をするのがたまらなくおかしくて、笑ってしまったりしました。

 それにしても笑ったことがないフェリ……。ウエイトレスなんてぜったい似合わないと思うんですがねえ……。

 後半三分の一のエピソードは、レイフォンの過去の話です。グレンダンの女王暗殺計画に、レイフォンが巻き込まれてしまいます。これもなかなか面白かった。

 レイフォンの強さがよくわかるお話でした。

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2009年06月25日

カミマゴ

☆カミマゴ 江藤苑(えとう その) ファミ通文庫 二〇〇九年六月九日

(ストーリー)

 突然空から落ちてきた天使、ルーちゃん。人類が絶滅し、パラヒューマンの世界になった未来世界で、ひねくれものの敬太が引き取ることになった。敬太には友達がたくさんいるのだが、どれも一癖もふた癖もある人間ばかり。そんななかにあってもルーちゃんは優しく、素直であった。ルーちゃんの天然ボケでありながら、素直で優しい人柄に、さすがの敬太も心を和ませてしまう。しかし彼が心を許すようになったその瞬間から、新興宗教がルーちゃんをひっさらう、という事件が発生する。怒り心頭に発する敬太は、新興宗教をぶっつぶそうとするのだが、それには裏事情があった。

 神であるマザーに逆らうことで、世界を支配しようとする敬太と、ルーとの心の交流が楽しい一冊。

(書評)

 宗教のいい一面は、敬太に言わせると少し不満なようです。

(引用開始)

「私はパラヒューマンの生き方を正常な状態へと戻すために戦い続けている使者なのだぞ。その私がおまえの言葉ごときで怯むと思うな!」

「正常な状態ねえ」

「そうだ!」

 教祖様は僕のつぶやきを耳聡く拾い上げた。

「人類を模倣しろ!」

 あいつらのせいで、これほど不自由なのに?

「森を畏れ敬うのだ!」

 僕らを閉じこめているのに?

「マザーを愛せ!」

 僕らの無意識にさえ口出ししてくるのに?

(引用終わり)

 独自の思想やオリジナルというのを否定するのが宗教、という考え方が面白いと思いました。敬太の野望は、ひとりぼっちがいやだから世界宗教を作り上げる、という教祖の黒幕に対しても、その自己中心性はほめられるが、一匹同族を与えておけば解決する。自分はパラヒューマンの偽の命を本物にしようとしてるんだ、おまえの願いはその途中での解決策に過ぎない、と言ってのけてしまうのです。

 素直に感心しましたね。そんな考え方もありなんだって。

 この性格のひねくれ方が魅力的だったので、TRPGで演じてみてもいいかな、と思ってます。もっと深く味わいたいですね、このライトノベル

 宗教は、人生を楽にする薬ですが、偽薬もありますし、本物かどうかを見分けるのに、この手の質問はとても有効なようです。

 カミマゴという名前のなぞも、この本でよくわかる仕掛けになっていて、発想力はすごいなあと思いました。

 ちょっとばかり、深みはないけどね(笑)

 ライトノベルだからしょうがないかな。 でも楽しかったです。

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2009年06月19日

上弦の月を喰べる獅子

☆上弦の月を喰べる獅子 夢枕獏 早川書房 二〇〇九年五月三十一日

 (ストーリー)

螺旋蒐集家にしてカメラマンの男と、岩手の貧しい詩人。そのふたりの意外な接点とは、螺旋であった。

 自分とは何者か。

 仏とは、なにか。

 問いは答えをはらみ、熱帯雨林を舞台にして、カメラマンのわたしと岩手の詩人のわたくしの、二重の螺旋となった思考は意外な話へと結びついていく。

(書評)

 螺旋にここまでこだわった人は、そんなにいませんね。

 なんでもかんでも螺旋なんだから。

「女」

「蛇」

「月」

 共通するのが螺旋だとかいう話になってくると、そりゃちょっとこじつけがましいかも、とか思ってしまいます。

 それにしても、舞台を描写する表現が豊かです。

 今にも熱帯雨林が迫ってくるような、奇々怪々なイメージが、頭の中をよぎっていきます。

 そこに触れられている、兄が妹を抱きたいと思う禁忌に触れた表現。

 宮沢賢治とその感情のからみあいなんか読むと、偉大なる先達も夢枕さんにかかるとカタナシだなーという印象を受けたりします。

 濃密なまでの世界観、そして哲学的な命題(自分とは何か)を抱えて、ひたすら答えを求める主人公の姿は、異様な迫力を持ってこちらにせまってきます。

 主人公が答えをさがしているうちに、主人公を妨害する勢力が出てきたりして、はらはらさせられて楽しかった。

 自分は何か、という質問が、世界を滅ぼすことになる答えを出すことになる、というのだから、話が壮大ですよね。

 それもそのはず、螺旋は蛇や女や月だけでなく、銀河や宇宙まで広がっていく、巨大なものの一つとなって表現されているのです。

 小さな遺伝子もまた、螺旋。

 そして宇宙それ自体も螺旋。

 ねじくれた世界を歩いて答えに迫りつつも、途中で問いをあきらめそうになったり、また、自分の中に不可解な第二の自分を感じたりするなんて、飽きさせない工夫が盛りだくさんです。

 随所に宮沢賢治の引用がされていて、これがまたパロディめいた雰囲気をかもしだしたりして、この辺のさじ加減もよかったな。

 ただ、現代人と宮沢賢治の二重構造、というのは、説得力にイマイチ欠けてる気がしましたが……。仕方ないかな。現代人に宮沢賢治ほどの個性のある人は、そうはいないだろうし。とも思った本でした。

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2009年06月18日

鋼殻都市レギオス07

☆鋼殻都市レギオス 第七巻 雨木シュウスケ 富士見書房

(ストーリー)

無事にツェルニに戻ってきたニーナは、都市戦に向けての試合の後、第十七小隊に自分が廃貴族に乗っ取られていた事実を告げる。が、マイアスでのできごと――狼面衆やリーリンとの出会いなど――はもちろん、マイアスにいたことすら口外しようとしなかった。巻き添えにしたくなかったのだ。レイフォンはそんな彼女を受け入れてくれる。ニーナはそれをよろこぶ。

 レイフォンは学友のナルキをゴルネオに鍛えてもらう代わりに、シャンテを自分が鍛えるハメになってしまった。そんな出来事の起っている間に、傭兵団の団長ハイアは、依頼された廃貴族の捕獲に失敗したことを考えていた。そんななかを、グレンダンから帰ってこい、報酬と地位を与えるという約束と、天剣の派遣をしたためたグレンダンの女王アルシェイラからの手紙がハイアのもとへもたらされる。レイフォンに負けたと解釈されたのか、と憮然となるハイアは、レイフォンと再戦をできないものかと考える。

 一方、フェリはニーナがいることを喜びながらも、レイフォンがニーナの存在にすっかり落ち着きを取り戻している事実にもやもやしてしまう。

(書評)

 リーリンとサヴァリスは、対立していくようです。サヴァリスはツェルニの生徒会長と同じ洞察をしています。

(引用開始)

「天剣授受者というのはグレンダンでの最高位の武芸者の集団ですが、言い換えてしまえば異常者の集団ですよ。強さというものの究極をなにを捨ててでも得たいと考えているような連中がほとんどです。レイフォンが違ったというだけのことです」

 レイフォンだけが違う。それにリーリンはわずかな喜びを感じた。サヴァリスの言いようでは、異常者の集団にレイフォンが分類されないからだ。

「あえて」言わせてもらえば、自らの強さのことだけ考えていれば、ガハルトのごとき愚か者に弱みを握られることもなかったし、グレンダンから離れる必要もなかった」

 だが、その喜びは一瞬のものでしかなかった。

「レイフォンの強さへの動機というのは、僕を始めとする”普通”の天剣授受者よりも複雑だった。もしかしたら、それゆえにレイフォンは強かったのかもしれない。だが、だからこそ……」

その言葉の継ぐ気に、リーリンは、どういう思いを抱けばいいのかわからなかった。

「理由を失った彼は今、とても弱くなっているのではないか、と思ってしまうのですよ」(引用終わり)

誰よりも強いレイフォン、みなから尊敬されているレイフォンが、同じ天剣授受者からこんな言われ方をしているのを読むと、自然とレイフォンを応援したくなるもんです。サヴァリスの性格はかなりゆがんでいるようですが、この男が今後、狼面衆と出逢ったとき、なにが起るのか……。ちょっと不気味でもありますね。

 その一方で、強さを失ったことでレイフォンが傷ついていないか、と思いを走らせるリーリンの優しさが清涼剤でした。今回フェリもいい味だしてたし、なかなかよい本だったという気がします。 

posted by アスリア at 07:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月16日

鋼殻都市レギオス06

鋼殻都市レギオス 第六感 雨木シュウスケ 富士見書房 二〇〇九年五月二十三日

(ストーリー)

 ニーナの突然の失踪、そして旅の途中だったリーリンのマイアスという名の都市への足止め。そして、サヴァリスのリーリン護衛……。

 マイアスでリーリンはニーナとでくわす。知っている人と同名であることに驚くリーリンだったが、さらに驚いたことに、ニーナはある条件付けをされていたのだ。

 一方で、ニーナを失ったことで、すっかり役立たずになってしまったレイフォン。意外な弱点がさらけだされた中、普段は移動して避けるはずの汚染獣のまっただなかにツェルニが立ち往生するという異常事態になった。一人で全てを解決しようとするレイフォンを、一つの麻酔銃が襲いかかる。

 レイフォンが麻酔で倒れている間に、ツェルニの生徒会長は、普通なら人間たちを襲い、これを喰らう汚染獣が、今回だけはなぜか交渉を申し出てきていることを喜び、汚染獣との商売が成り立つかどうか考え始めている。

 その間に、リーリンとニーナは、狼の面をかぶった男たちに襲われていた。彼らの口にするイグナシスという名前の謎。彼らとの戦いに対して、ニーナは自分に条件付けられたある事実を持って戦いに望む。が、それは無茶な戦いでもあったのだ。リーリンはニーナとこの都市、マイアスを救うために、あることを無意識にさせられてしまう……

(書評)

 レイフォンの意外な弱点と、その弱点であるニーナの強さと弱さが描写されています。

 リーリンが、ニーナのストイックさに感動しつつも、こんな風に思うシーンがありました。

(引用開始)

 強い自責の念が渦巻くのをリーリンは感じた。自分の失敗さえ許さない強さ。それはニーナにとって最大の武器であると同時に、最大の弱点でもあるのではないだろうか?

(P192)

(引用終わり)

 この本では、主役級のニーナの強さと弱さがリーリンによって看破されているんですが、同時にリーリンの秘密もまた、そのニーナとからみあって、複雑な構造になっています。

 アクションシーンもなかなか見せてくれますし、生徒会長のカリオンが、今回重要な役所で大活躍をしているのも結構よかったですね。

フェリは今回、あまり活躍しなかったので、ちょっと不満かな……。もともと、このシリーズはニーナとレイフォン、そしてリーリンという三人がからみあうお話なようなのですが、フェリもいい味だしてるので、できれば今後もばんばん活躍して欲しいです。

 レイフォンの故郷、グレンダンの女王さまと、リーリンとの邂逅のシーンは、なぞをはらんでちょっとわけがわからなかったりしますが、あとになればこの思わせぶりな表現がどういう意図だったのか、判るようになってます。

 というわけで、今回の本は、これ一冊では完結しないお話なのですね。

ところでイグナシスといえば黄金の牡羊も口にしていた名前であります。いったい、それと狼面衆との間には、なにがあるというのでしょうか!そして、ものをいう汚染獣が、機械のようだった、というところも謎です。どう話が転がるのか。先が気になります。

posted by アスリア at 19:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月09日

鋼殻都市レギオス05

☆鋼殻都市レギオス 第五巻 雨木シュウスケ 富士見書房

(ストーリー)

 レイフォンの属していた孤児院の養父から、「レイフォンの全てを許す」しるしとしての錬金剛(ダイト)を受けとったリーリン。これを持参してツェルニに行くべきか、それともただ送付するだけにしておくのか……。リーリンは迷いに迷った末、ツェルニに向うことを決意する。グレンダンの女王は、気に入っているリーリンを護衛させるために、天剣の一人、サヴァリスをリーリンに同行させる。

 その頃、レイフォンの隊にナルキが志願して入る。レイフォンに自分のふがいなさを思い知らされたためだとナルキは言い、合宿にメイシェンを同行させる。そしてとうとう、ナルキはレイフォンに問いかける――「天剣授受者ってなんだ?」

 その問いに答えた瞬間、レイフォンの足場が崩れてしまった……!

(書評)

 レイフォンについては、こんな言葉で表現されています。

                        (P90〜P91引用開始)

「僕は……化け物だ」

あえて自分をそう呼んだ。

「だから、僕を怖がったって、なにも悪くない」

 言い含めるように、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

 ナルキが息を飲んだまま動かない。

 メイシェンは自分の体を抱くようにして震えている。

 伝わっただろうか?

 メイシェンはわからない。だけど、ナルキには伝わったはずだ。今日の訓練、それ以前にハイアとの一騎打ちを見ているナルキにはレイフォンの強さが伝わったはずだ。

 それだってレイフォンの実力の一部分でしかないのだけれど。

 言うべきことすべて言ったと、レイフォンは二人の反応を待った。暗闇の中、二人の表情はわからない。驚いているのか、恐れているのか、泣いているのか……

(引用終わり)

 親しくつきあってる人に、ただ強いというだけではなく、ものすごく強いがために、自分自身を隠さねばならなかったレイフォンの、柔らかな心がよく伝わってきます。

この直後に、足場が崩れて、メイシェンが巻き添えを食らってしまうんですが、その危機に立たされても、レイフォンはメイシェンを恋しているわけではない、という微妙な描写がまたよいですね!

 メイシェンは、助けられてレイフォンをますます好きになるんですが、レイフォンは自分のことで手一杯。だいたい、レイフォンを狙う人が多すぎますからね〜ほんとに。

 そして、電子精霊ツェルニの危機、という、レイフォンにとっても重要な事件が勃発します。その解決を考える際に、すっかりレイフォンの思考パターンになってしまっております。これはわざと決定的な事実を明示せず曖昧に表現したり、登場人物の視点から登場人物自身の誤解を記述する方法で、ミステリー小説では倒叙物と呼ばれる形式ですが、ファンタジーにその方法を取り入れるとは、なかなか雨木さんは腕がたつ作家さんだなと思いました。

posted by アスリア at 08:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月02日

鋼殻都市レギオス04

(ストーリー)

 いつも斜めにしか物事を見ていないシャーニッド。だが、彼にも彼なりの過去があった。昔彼の所属していた第十小隊と試合になる第十七小隊。しかし第十小隊には、シャーニッドに対する敵意があった。

 その一方で、禁じられている違法酒をめぐる事件に、グレンダンの誇る最強傭兵集団の第三代団長ハイアがからんでくる。彼の目的は、違法酒の事件とは関係なく、黄金の牡山羊の捕獲にあった。対立するレイフォンとハイア。そして、第十小隊と第十七小隊。シャーニッドの過去と、ハイアの目的がからみあう!

(書評)

 今回は、すれっからしのシャーニッドの意外な過去のお話でした。ディンという男を中心にした第十小隊に入っていたシャーニッドは、ほんとはそれほどすれっからしでもなかったのでした。むしろ、真面目でまっすぐな人柄だったようです。しかし、ディンは一つ、問題を抱えています。都市を守りたいあまり、禁じられた違法酒に手を出したのです。

 そして、ディンは真相をあばかれ、レイフォンと対立します。

(引用開始)

「お前にはわからんだろう」

ディンが動かない体を動かそうと、顔を真っ赤にして言った。

「己の未熟を知りながら、それでもなおやらねばならぬと突き動かされるこの気持ちは、お前にはわからん」

 はっきりと言われ、レイフォンは顔をしかめた。

「……僕だって、人生のなにもかもがうまくいったわkじゃないですよ。むしろ、失敗したからここにいるんです」

「……」

「津追いからうあまくいくなんてわけじゃない。うまくやれなかったから失敗するんです。あなたはうまくやれなかった。最悪の選択肢を選んだんだ。なら、この結末はまだマシな方ですよ」

「……それは、誰が決めた?」

「おれの結末を誰が決めた?シャーニッドか? ニーナ・アントークか? 生徒会長か? おれの結末を他人に決めさせはしない。おれの意思はそこまで弱くない……」

(引用終わり)

自分の、武芸者としてのすべてを賭けたことが叶えられなくなったとき、別な存在がディンをのっとる――。

 黄金の牡山羊に憑依されたディン、そして彼と戦うハメになるレイフォン達。前巻での伏線がひとつ、効いてきていますね!

 ハイアはどうでるのか、そして黄金の牡山羊の目的はなにか。

 さまざまな人間模様とともに、謎を楽しめる一冊。

新しいキャラクター、ハイアという人物が結構おもしろいし、シャーニッドの真面目さが善かったので、この本はわりと楽しめました。

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2009年05月28日

鋼殻都市レギオス03

☆鋼殻都市レギオス 第三巻 雨木シュウスケ 富士見書房 二〇〇九年五月十二日

ストーリー

 レイフォンの故郷、グレンダンでレイフォンの帰りを待つ、幼なじみの少女リーリンの前に、突然銀髪の青年が現れた。彼の名はサヴァリス、グレンダンの十二人の〈天剣授受者〉のひとりである。「レイフォンに関することで、きみに災難が振りかかる」そんなふうにいうサヴァリスの言葉に、リーリンは震える。

 一方学園都市ツェルニでは、ニーナの指揮する十七小隊(レイフォンも所属している)が、偵察隊を命じられ、〈廃都市〉に向った。同行する第五小隊隊長ゴルネオは、なぜかレイフォンに敵意のこもった視線を向ける。ゴルネオの過去と、レイフォンの過去の間に、なにかがあったらしい……

(書評)

話がバラバラに流れていって、まとめにくい本です。いろんなエピソードが錯綜しすぎてるんですね。

 たとえば、リーリンとサヴァリスの間の出来事が冒頭にあり、その話を中心にするのか、と思ったら、ゴルネオが出て来て、レイフォンに敵意を向ける、という具合。

 なんとかストーリーの骨格の一つとも言える展開(今までニーナにだまっていた自分の過去についての事柄を、打ち明けるようになったレイフォンの成長)はよく判りました。

 その直後に、黄金の牡山羊が現れるシーンが出て来ますが、この黄金の牡山羊というのがくせものなんです。

 是が何者なのか、という謎の伏線は此の本では解消されていません。

 この本の主題は、おそらくゴルネオとレイフォンの対決。

 ゴルネオが兄思いだっていうこともよく判るシーンや、戦いのシーンがあります。

 その一方で、サヴァリスがリーリンを守る、という場面があり、その動機の謎もまた、今回の本のなかでは解消されていないのです。

 このあたりが、伏線の錯綜というところなんでしょう。ちょっと雑然としているという印象を与えます。

 此の本で一番印象的なシーンを選ぶとしたら、ここかな。

(引用開始)

 混乱が支配しようとしていた。牡山羊の目に映る自分が動揺しているように思えた。そんなはずはい。見えるはずがない。今は夜だ。たとえ映っていたとしても、いくら視力を強化したとしても、そんなものが見えるはずもない。

 なのに、見える気がする。

 いつのまにか、牡山羊の目の中に閉じこめられたかのような圧迫感がレイフォンを惜し包んでいた。

(この僕が……呑まれている?)

(引用終わり)

 武芸の天才にして、天剣授受者のレイフォンの苦闘と焦りが感じられます。

 この本以降からストーリーは一冊単位で流れるのではなく、数冊単位で流れていくようになっていくようです。それにしても伏線の張り方があらっぽすぎます(笑)

 様々な謎をはらんで、次巻以降に続く物語。長いつきあいになりそうです。

posted by アスリア at 08:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月26日

鋼殻都市レギオス02

☆鋼殻都市レギオス 第二巻 雨木シュウスケ 富士見書房

(ストーリー)

  武芸都市グレンダルから手紙が誤配されてメイシェンのところへ……。メイシェンは、悪いと知りつつ、中身を読んでしまった。その手紙にショックを隠せないメイシェン。手紙はそれからフェリ、ニーナへと渡り歩く。

 そうしている間にも、汚染獣の攻撃。一人でそれを解決しようとするレイフォン、そして一人で「きばっている」ニーナ。いくら一人でがんばっても、ニーナの隊は、バラバラに行動をする、不協和音の隊だった……

 汚染獣がそんな隊に、襲いかかってくる!

(書評)

 いくら強くても、ニーナやレイフォンたちだけではどうしようもない、チームワークの不協和音を、なんとかして解消したいニーナの悩みが、人ごとではありません。サークル活動にしても学級運営にしてもクラブ活動にしても、団体生活において協調性の無い人間というのはいるもんですからねえ……(しみじみ)。

 迷っていたニーナが都市の意志である「電子精霊」に慰められるシーンは、ほろりとさせられます。

 そのあと、レイフォンが生徒会長のカリオンに依頼されて、力を貸すことになったので、フェリにいろいろ絡まれてしまうシーンがあります。フェリは優柔不断としか思えないレイフォンがもどかしく、また、メイシェンたちレイフォンのとりまきに対する対抗意識から、こんなことを言い出します。

(引用開始)

「……そんなことよりも、先輩という呼ばれ方はまとめられてて嫌です。別の呼び方を要求します」

「え?」

「あなたも、あのクラスメートたちにレイとんとか呼ばれているそうじゃないですか」

 フェリが唇を尖らせてそんなことを言う。いきなりの話題の変化にレイフォンは戸惑うばかりだ。

「確かにそうですけど、でもあれは……広まってあまりうれしい呼ばれ方じゃないというか、ええと……」

「では、別の呼び方を考えましょう。レイ、レイちん、レイ君、レイちゃん、レイっち……どれがいいですか?」

「え? もうその中で決定ですか?」

「他に何か候補がありますか?」

「いや、自分で自分の呼び方考えるのは恥ずかしいですって」

「では、レイちんにします」

「……ちょっと、考えさせて下さい」

(以上引用)

 すっかりフェリにいじられてるフォンフォンことレイフォンくんの、明日はどっちだ。

二〇〇九年五月十一日

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